精神的苦痛でも傷害罪になる!?

精神的苦痛・ストレス

エル

今回は、精神的苦痛による傷害罪についてだよ!
え!精神的苦痛でも傷害罪になるの!?

リミナ

傷害罪になる行為とは?

傷害罪が成立するのはどのような場合でしょうか?傷害罪になる行為として真っ先に思いつくのは、「人を殴ってケガをさせた場合」「ナイフで人を切りつけた場合」などのような、肉体を傷つけた場合になると思います。

もちろん、これらのような場合も傷害罪にあたりますが、傷害罪の「傷害」とは「被害者の健康状態を悪くし、その生活機能の障害を引き起こすもの」とされており、殴る蹴るなどの単純な物理攻撃以外によっても傷害罪が成立することがあります。

傷害罪は殴ったり蹴ったりした場合だけじゃないんだ!

リミナ

精神的苦痛でも傷害罪は成立する!

「生活機能の障害」を引き起こしたかどうかが「傷害」にあたるかの判断基準でした。そのため、物理攻撃によって肉体を傷つける行為ではなくても、精神を傷つけて、生活機能の障害という結果になっている場合には「傷害」にあたる行為になります。

つまり、人にストレスなどの精神的ダメージを与えて、病院で診断されるような精神的障害を起こした場合には傷害罪が成立することになります。

ここからは、騒音やいやがらせ電話による精神的苦痛を与えたことで、傷害罪が適用された実際の裁判例を2つ紹介します。

騒音による傷害罪が認められた裁判例

Aは、被害者の家に向けて、平成14年6月から平成15年12月ごろまでの約1年半もの間、朝から深夜まで目覚まし時計のアラーム音、ラジオの音声を鳴らし続けていました。

Aが出していた騒音を測定すると、Aの敷地の境界から約1メートル離れた被害者の家の軒下で、平均値が約70デシベル、Aの家の方向に窓のある1階台所にでは、窓ガラスを開けていると、平均値が約60デシベル、窓ガラスを閉じた状態で、平均値が約50デシベル、被害者が寝室として使用している2階の和室では、二重になった窓ガラスを閉めた状態でも最大で約50デシベル、平均値が約38デシベルになりました。

騒音の目安は下の表のようになりますが、50デシベルを超えると、十分騒音といえるレベルになるといえるでしょう。また、中央環境審議会答申の屋内指針では、一般地域で夜間については、睡眠影響に関する知見を踏まえて35デシベル以下とすることが適当と考えられているようです。

デシベル騒音の目安
50静かな事務所
換気扇
60掃除機
洗濯機
テレビ
70セミの鳴き声
うるさい街頭
80電車の車内
布団たたき

この騒音によって、被害者は精神的ストレスを受けて、全治不詳の慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負いました。

判決では、Aの行為は、被害者に心理的ストレスを与えて、慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負わせる行為であり、傷害罪が成立するとされました。刑罰としては、懲役1年の実刑判決という厳しいものになりました。(平成16年4月9日 奈良地裁 その後、控訴・上告棄却

エル

この事件は、当時「騒音おばさん」としてニュースとかでも報道されてたね

嫌がらせ電話による傷害罪が認められた裁判例

Aは、帝国インキ製造株式会社 三鷹工場で工員として働いていました。帝国インキ製造株式会社の社長が三鷹工場を巡視するときに、Aは社長から注意を受けることが度々あり、その都度上司からも怒られていました。そのことから社長を恨み、報復しようと考えました。

そこでAは昭和53年10月から昭和54年4月ころまでの間、ほとんど毎日、深夜から早朝にかけて、自宅や付近の公衆電話から、社長の自宅に電話をかけて、社長の妻などが電話に出た場合には、無言で電話を切り、電話に出ない場合には、長時間電話をかけ放しにして電話の呼出音を鳴らし続けました。

このような嫌がらせ電話によって、社長の妻は、精神的に不安を感じ、不眠状態になるなど、心身を極度に疲労させられました。そのため、社長の妻は加療約3週間が必要となる精神衰弱症となってしまいました。

判決では、いやがらせ電話によって精神衰弱症にさせたことは傷害罪になると判断されました。刑罰としては、脅迫罪が加重されたうえで、懲役1年、執行猶予4年という判決となりました。(昭和54年8月10日 東京地裁)

宿題が精神的ストレスなんだけど傷害罪になるかな?

リミナ

エル

それはならない…

この記事のまとめ

  • 精神的苦痛による傷害罪は成立する場合がある
  • 裁判では「騒音」「いやがらせ電話」による傷害罪が認められた