傷害罪と暴行罪の違いとは?

傷害・暴行イラスト
友達が駅のホームで突き飛ばされて、転んでケガしちゃったんだって!

クリミナ

エル

それは傷害罪になるかも!
傷害罪は暴行罪とは違うの?

クリミナ

エル

そう!今回は「傷害罪と暴行罪の違い」を説明するよ!

「傷害」とはどのような行為?

傷害という言葉も、暴行という言葉も、「ケンカをして相手のことを殴ったら当てはまりそう」というイメージはあると思いますが、刑法では傷害罪と暴行罪とで分けられています。そのため、「傷害」と「暴行」とはしっかり違うものとして区別されています。

まずここでは、「傷害」が法律上ではどのように定義されているのかを説明します。

「傷害」の定義

傷害罪にあたる「傷害」とはどのようなことを指すのでしょうか?

平成24年1月30日の最高裁判所での判例では、傷害の定義として「被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したもの」という表現が使われています。

※惹起(じゃっき):(問題などを)ひきおこすこと。

殴られたり蹴られたりして、傷ができた、骨折したなどの場合には、「傷害」に当てはまることはわかりやすいと思います。しかし、全ての事件がこのような分かりやすい「傷害」ではありません。そこで、いくつか具体例を紹介します。

「傷害」の具体例

たとえば、「髪を切った場合」はどうでしょうか?髪を切った場合には、健康状態に悪影響を与えたり、生理機能を害することはありませんので、「傷害」にはならないということになります。しかし、「髪を抜いた場合」には、毛根は皮膚の奥にあり、引き抜くことで毛細血管などを傷つけることになるので、「傷害」にあたるとされています。

「睡眠薬を飲ませて眠らせた場合」は「傷害」になるのでしょうか?このケースでは、睡眠薬によって眠らされたことは、意識障害を発生させたことと同じであり、「傷害」にあたるとされました。

これらのような「傷害」にあたるかどうか、すぐに判断することが難しい場合に、先程紹介した「被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したもの」という、難しい定義が判断基準として役に立つことになります。

これらの他にも、いやがらせ電話、隣人の騒音などによる精神的なダメージによって、「傷害」が認められたという裁判例もあります。この精神的苦痛による傷害罪がみとめられた2つの判例は、下の記事で詳しく紹介しています。

精神的苦痛・ストレス精神的苦痛でも傷害罪になる!?

 

「傷害」の具体例

  • 「殴って骨折」→傷害
  • 「髪を切る」→傷害ではない(暴行)
  • 「髪を抜く」→傷害
  • 「睡眠薬で眠らせる」→傷害

「暴行」とはどのような行為?

「暴行」の定義

「傷害」がどのような行為かを説明しましたので、次に「暴行」とはどのような行為と定義されているのかについて紹介します。

昭和29年8月20日の裁判では、暴行罪にあたる「暴行」とは、「人の身体に対し不法な攻撃を加えること」と解釈されました。ここから一般的には、「人の身体に対する不法な有形力の行使」という定義が広く使われています。また、暴行をして相手に傷害を負わせた場合には、傷害罪になりますので、「傷害までには至らなかった」ことも必要になります。

暴行の定義は、傷害の定義よりも分かりやすいですが、判断が難しいパターンもありますので、具体例をいくつか紹介します。

「暴行」の具体例

たとえば、「脅すために近くで日本刀を振り回した場合」は、「暴行」になるのでしょうか?これは、昭和39年1月28日の判例で、狭い4畳半の室内で被害者を脅かすために日本刀を数回振り回すことは「暴行」にあたると判断されました。また、「驚かせるために石を近くに投げた場合」にも、「暴行」になるとした判例もあります。このように、体に直接触れての攻撃でなくとも、傷害を負わせる危険性のある行為は「暴行」に当てはまることになります。

それでは、「塩をふりかけた場合」はどうなるでしょうか?塩をふりかけた行為は、傷害を負わせる危険がない不法な攻撃といえますが、判例では、単に不快にさせるだけの行為であっても「暴行」になると判断されています。つまり、体に直接攻撃が加えられた場合には、傷害を負わせる危険がなくても「暴行」になるということになります。

「暴行」の具体例

  • 「殴る」→暴行
  • 「脅しで日本刀を振り回す」→暴行
  • 「近くに石を投げる」→暴行
  • 「塩をふりかける」→暴行

「傷害」と「暴行」の違い

「傷害」と「暴行」、それぞれの定義を紹介しましたので、ここまでに説明した、傷害と暴行の違いを表にまとめます。

定義具体例
傷害健康状態を悪くする
生活機能の障害を起こす
「殴って骨折」→傷害
「髪を切る」→傷害ではない(暴行)
「髪を抜く」→傷害
「睡眠薬で眠らせる」→傷害
暴行人の身体に直接攻撃を加える
ケガをする危険がある行為をする
「殴る」→暴行
「脅しで日本刀を振り回す」→暴行
「近くに石を投げる」→暴行
「塩をふりかける」→暴行

※スマートフォンでの閲覧の場合、上の表は左右にスクロールできます。

ケガや病気にさせたら傷害、攻撃をしただけなら暴行、ということだね!

クリミナ

エル

簡単にいうとそういうこと!

傷害罪と暴行罪で刑罰は違う?

ここまでは、傷害と暴行の定義の違いについて説明しました。最後に、傷害罪と暴行罪の刑罰について説明します。

傷害罪の刑罰

傷害罪は刑法で、下のように定められています。

刑法204条

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

このように、傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役、50万円以下の罰金」となっています。

暴行罪の刑罰

暴行罪は刑法で、下のように定められています。

刑法208条

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役・拘留、30万円以下の罰金・科料」となっています。

傷害罪の方が、暴行罪に比べて重い処分になっています。処分の内容は裁判で決められますが、傷害行為や暴行行為の悪質さ、傷害罪であればケガなどの重さ、被害者との示談が成立しているかどうかなどが、刑罰の重さを判断するための判断基準になります。

傷害罪と暴行罪の刑罰

  • 傷害罪→ 懲役:15年以下 罰金:50万円以下
  • 暴行罪→ 懲役・拘留:2年以下 罰金・科料:30万円以下

懲役と拘留の違い、罰金と科料の違いなどについては、こちらの関連記事で紹介しています。

懲役・罰金・逮捕刑にはどのような種類がある?

 

傷害罪と暴行罪で結構差があるんだなぁー

クリミナ

エル

懲役が、傷害罪だと最大15年、暴行罪だと最大2年だもんね!