懲役・禁錮・拘留の違いとは?

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懲役と禁錮って同じことなのかな?

リミナ

エル

どっちも身体拘束される刑だけど少し違いがあるよ
そうなんだ!何が違うんだろー

リミナ

エル

今回は、「懲役・禁錮・拘留の違い」について解説するよ!

刑法における懲役・禁錮・拘留とは?

警察が容疑者を逮捕しても、逮捕された事実を家族などに連絡する義務は法律上ありません。しかし、容疑者が社会的にいなくなるわけですので、親族などが行方不明者として警察に届け出がされることのないように、通常は家族などに連絡を行います。

しかし、その罪名の説明まではしてくれません。実際に警察がその罪名で逮捕しても、検察で起訴されると決まっているわけではありませんので、無意味なトラブルを避けるためです。

逮捕逮捕後の流れは?~逮捕から判決まで

家族が突然逮捕されたと連絡がきた場合、多くの家族はパニックになったり、もしくは逮捕された容疑の罪名を調べたりするでしょう。

たとえば、名誉毀損罪で逮捕された場合に、罪名を検索すると刑法230条が出てきます。

刑法230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

名誉毀損罪の場合には、懲役と禁錮の両方が出てくることになり、懲役と禁錮は何が違うのかと戸惑う方も多いのではないでしょうか。

他にも、身近な犯罪でいうと、喧嘩で捕まるなどすれば刑法第208条の暴行罪が適用されます。その場合の刑罰は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされています。ここにも様々な刑罰が出てくることになるので混乱するのではないでしょうか?

懲役・罰金・逮捕刑にはどのような種類がある?

懲役・禁錮・拘留には刑罰として、自由刑という刑罰に分類されます。身体を拘束されて自由を奪われるという点で共通している刑罰です。

弁護士が刑事弁護を行う場合、「懲役3年が相当である」などと、先に結論を決めてから弁護をします。その際に、逮捕された依頼者が「懲役ではなくて禁錮がいい」などという希望を出せば、弁護士はできるだけその方針に従います。

もしもここで、懲役と禁錮と拘留の違いについて、依頼者の認識が間違っていると、思っていたのとは違う弁護活動になってしまう可能性もあります。

そのため、自分や家族などの身近な人物が刑事事件の対象となった場合には、懲役・禁錮・拘留の違いをしっかりと認識しておくことは重要になります。

懲役・禁錮・拘留の刑罰の内容とは?

「懲役・禁錮・拘留」は身体の自由を奪われる刑で、自由刑と呼ばれますが、刑法では自由刑の他に、生命刑と財産刑があります。

日本の刑法において最も重い刑罰とされているのは死刑で、これは生命刑にあたります。死刑には服役という概念はなく、受刑者の死をもって刑罰の遂行とされるため、死刑が執行されるまでは裁判を待つ容疑者と同じく拘置所にて身柄を拘束されることになります。

財産刑は罰金を支払い、財産を徴収することで刑とする刑罰です。身体を拘束されることもないので、自由刑と財産刑の両方が刑罰として設定されている罪についての刑事裁判では、可能であれば財産刑となるように弁護することになります。

「懲役・禁錮・拘留」は自由刑という共通点で括られていますが、刑法で言葉が分けられているように、刑罰の内容が異なります。

懲役

裁判で有罪となり懲役の判決をされた場合には、刑事施設に収監されます。収監される刑事施設は、法律上規定はありませんが、治療を受けることが必要な者、同性愛者で集団生活が難しい者などは特別に収監されて一つの刑事施設集められます。

その他にも刑の種類によって刑事施設が決定されることもあり、刑務作業についての能力の有無で刑事施設が決定されるなど、そらぞれの事情によって収監される刑事施設が決まります。また、懲役を受けている途中であっても、刑事施設が変更となって移送されるケースもあります。

懲役は身体拘束のをされるだけではなく、刑務施設内での刑務作業を含めたものを刑罰としています。禁錮、拘留、拘置所に留置されている者などは、自主的に志願すれば刑務作業を行うことができるのに対して、懲役となった場合には、刑務作業は義務とされ、自分で選ぶことはできません。

刑期については無期懲役と有期懲役があります。無期懲役は死刑の次に重い刑罰であるとされ、刑罰に期限がありません。有期懲役は刑法12条で1ヵ月から20年までとされていますが、死刑や無期懲役を軽減して懲役・禁錮とする場合には、30年が上限となります。

刑法12条
懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。

刑法14条
死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を30年とする。
2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては30年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては1月未満に下げることができる。

刑務作業とは?

刑務作業は、生産作業,社会貢献作業,職業訓練、自営作業の4つに分類されており、さらにその中でもさまざまな作業項目に分類され、個人の適正に合わせた作業を行います。

また、作業時間は1日8時間を超えないものとされ、作業に応じて作業報奨金が支給されます。平成29年度の法務省が発表した一人辺りの月に支払われた作業報奨金の平均額は4,340円でした。作業報奨金は最大で月額10,000円になります。

刑事施設は健康管理のために栄養士による栄養バランスの取れた食事が提供され、摂取カロリーも必要なだけ与えられます。そのため、カロリーを多く消費する立ち仕事にあたり刑務作業をした場合には、ごはんなどの主食の量が増えることになります。刑務作業をすることで、多少は食事の面で優遇されることになります。

刑務作業でご飯の量が変わるんだ!

リミナ

禁錮

禁錮を判決されると刑事施設に収監されます。懲役を受けた受刑者と区別して刑事施設に収監するという法律上の規定はありませんが、一般的には刑務作業が少ない禁錮刑の方針に沿った刑事施設に収監されます。

自由刑として身体拘束がされますが、刑務作業の義務はなく、収監されることが刑罰となります。希望すれば刑務作業を行うことはできますが、刑務作業をしたからといって刑期が短くなるということはありません。

しかし、実際には暇な時間に耐えきれないという受刑者は多く、平成29年度の犯罪白書によれば禁錮の刑罰を受けている受刑者の88.8パーセントが刑務作業を志願しています。

刑期については無期禁錮と有期禁錮があります。無期禁錮は主に政治犯を収監するために制定されたもので、1947年以降の戦後において日本では執行されたことはありません。

拘留

拘留と判決されると刑事施設に収監されます。刑務作業義務がなく、申告によって行うことができるなど内容としては禁錮と同じです。拘留は禁錮の中でも刑期が短い刑罰であり、1日以上30日未満と期間が決められており、短期間の身体拘束になります。

比較的に軽い罪の場合に適応されますが、刑事施設に収監され、自由を奪われる自由刑です。

拘留の件数は、2010年以降から急速に減っており、件数でいえば2018年まで年間に10件以内というごく少ない件数となっています。そのため、判決で拘留となることはほとんどないと言えるでしょう。

エル

懲役・禁錮・拘留の違いを簡単にまとめたよ!
期間刑務作業
懲役1か月~20年、無期義務
禁錮1か月~20年、無期任意
拘留30日未満任意

懲役・禁錮・拘留を比較した不利益の違い

自由刑の中でも特色によって分類されているだけでなく、懲役と禁錮と拘留のそれぞれを比較すると刑罰に応じた不利益の違いがあります。刑罰そのものではなく、刑罰に付随した法律による違いもあり、特色を押さえておくことは大切です。

刑罰を受けたことによる資格剥奪の違い

禁錮以上の刑罰を受けた者は、一定の条件で、公務員や国家資格の受験権利や資格そのものの権利を失います。そのため、拘留と違い、禁錮及び懲役を受けた場合には出所後の人生に影響する恐れがあるのです。

それぞれの国家資格によって再試験の基準などは違ってきますが、弁護士を代表する幾つかの国家資格は、禁錮及び懲役の判決がされた時点で、国家資格を剥奪されます。また、満期から2年、3年、5年、10年など、刑罰を受けたあと一定の年月が経たないと受験資格がない国家資格などがあります。

国家資格の勉強を始めてから受験資格がないとわかっても時間の無駄になりますので、もしも刑事施設内で何かの資格の勉強をする際には受験勉強をする前に、事前にその資格の受験資格を自分が持っているのか確認した方が良いでしょう。

他にも、禁錮や懲役を受けて、再就職を考える時に求人が多い警備員を候補に入れる方もいるかもしれません。しかし、禁錮や懲役を満期になってから5年以上経過しなければ、警備員として就職することはできません。

懲役と禁錮の不利益の違い

懲役のメリット・デメリット

懲役の最大のデメリットは刑務作業の義務でしょう。移動や生活の面で共同作業も多く、規則も厳しい刑事施設に収監されます。このように、懲役は刑務作業の義務がありますので、禁錮や拘留よりも生活が厳しいという側面は確かにありますが、テレビや慰問などの娯楽も多いです。

しかし、懲役には適性によっては職業訓練を受けて、社会復帰に向けて役に立つ資格を取得できる場合もあります。能力があれば刑務作業の質を上げてくれて作業報奨金をより多くもらえることができます。月に4000円か5000円でも、積みあがれば大きいものです。

禁錮のメリット・デメリット

禁錮には刑務作業の義務はありません。しかし、だからといって禁錮が懲役よりも楽と感じるとは限りません。懲役よりも規則は穏やかで集団生活の側面も少なく、気楽な印象はありますが、逆にいえば何もやることがありません。

拘束されているだけで何もない時間を「暇」と捉えるか「自由」と捉えるかどうかで禁錮の苦しさは変わってきます。暇な時間に耐えきれず、何かをやっていた方が、まだ気が紛れるという人は懲役の方が向いているかもしれません。

逆に資格の勉強をするなど、一人の時間を有意義に使うことができる人であれば、懲役よりも禁錮の方が遥かに楽と感じるはずです。

禁錮にはない懲役の側面として社会復帰に力を入れている点が挙げられるので、長期に渡る禁錮の場合、社会復帰を考えると不利になる可能性は高く、デメリットは大きくなると言えるでしょう。

たしかに、何年もやることないのは暇かも…

リミナ

仮釈放の有無の違い

懲役と禁錮については、社会復帰の能力・意思など特定の条件を満たした場合、刑事施設から釈放されて社会生活を送ることができる、仮釈放という制度があります。しかし、拘留には仮釈放が存在しませんので、満期で出所するしかありません

有期刑の場合3分の1を過ぎてから、無期刑の場合には10年以上経過してから、仮釈放の権利が発生します。実際には、有期刑は三分の二を過ぎてから、無期刑の場合は有期刑の最大刑期である30年を過ぎてから仮釈放が検討されるのが一般的です。

刑法28条
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

禁錮については、懲役と違い模範囚というものがありません。仮釈放の条件である「更生の意欲が認められる」というのは懲役の場合ですと、普段の生活態度などで努力をすれば刑務官に認めさせる機会があります。しかし、禁錮の場合、このような仮釈放を有利に進める努力をすることが比較的難しくなります。

懲役の場合には、身柄を引き取ってくれる親族などがいない場合に、身柄引き渡し先の施設を探すのに不利になります。仮釈放されるためには、釈放後に住む住所が決まっていなければなりません。そのため、禁錮よりも重罪を犯したとして印象が悪い懲役は引き取り先の施設などが見つかりにくく、仮釈放が難しくなることがあります。