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被疑者の防御権とは?
容疑者が自分の身を守るための権利
被疑者とは、警察などの捜査機関から犯罪をしたという容疑をかけられ、捜査の対象になっている人のことをいいます。法律用語では被疑者とするのが正しいですが、一般的には容疑者と呼ばれていますので、ここでは容疑者と呼びます。
容疑者になると、警察の捜査の対象となりますので、逮捕されて身体拘束された状態で取調べを受けることになるなど、肉体的・精神的に大きな負担がかかることになります。
しかし、取調べのときに作成される供述調書などは、刑事裁判まで進んだときにも重要な証拠になります。そのため、取調べなどの起訴される前の段階から、容疑者が自分の身を守ることは重要になります。
ここで役に立つのが、容疑者が自分の身を守るために使うことのできる権利である「防御権」です。
逮捕された後の流れ
逮捕された後の流れを図で簡単に紹介します。
逮捕には4種類ある?- 1.警察署での取り調べ
警察署に連行された容疑者は、警察官による取り調べを受けることになります。ここでは、弁解録取書と身上経歴供述調書という2種類の供述調書が作成されます。 - 2.検察への送検
警察から検察への送検がされた場合、容疑者を受けとった検察官は、24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断することになります。 - 3.勾留
逮捕後に身体拘束をされる期間は最大72日でしたが、勾留期間はこれに比べると長くなっており、原則10日間以内、延長された場合は最大20日続くことになります。 - 4.起訴・不起訴の決定
検察官によって起訴・不起訴の判断が下されます。起訴になった場合は刑事裁判となり、不起訴となった場合には前科がつくことなく釈放されます。 - 5.起訴状の提出
起訴をする場合、検察官は裁判所に、「被告人を特定できる事項」「公訴事実」「罪名」の3つを記載した起訴状を提出します。 - 6.刑事裁判
刑事裁判では、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論といった手続きを経て、判決が下されることになります。
逮捕された後の詳しい流れについては、下の関連記事で紹介しています。
逮捕後の流れは?~逮捕から判決までエル
①黙秘権とは?
容疑者の防御権の1つが、黙秘権です。黙秘権はニュース、ドラマ、小説などで聞いたことがある人が多いと思います。
黙秘権とは、取調べなどで沈黙し、質問に答えることや供述をすることを拒否する権利です。
刑事訴訟法311条
被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
なぜ犯罪を犯した可能性のある容疑者に、黙秘権が認められているのでしょうか?
その理由は、裁判などで有罪が確定するまで無罪の推定を受けますので、犯罪を証明する義務を追うのは捜査機関側であり、無罪の推定を受けている容疑者に協力する義務はないからです。
また、ポリグラフ検査(うそ発見器のようなもの)については、脈拍などの生理的な変化を記録するもので、容疑者の供述を記録するものではなく黙秘権を侵害しないと考えられています。
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②弁護士依頼権とは?
刑事事件の容疑者として、捜査を受けていたり、逮捕されたりしている場合であっても、弁護士に相談して弁護士に依頼する権利があります。
刑事事件で逮捕された場合にも、弁護士に依頼する権利があります。また、費用の問題などで弁護士を頼むことが難しい場合には、条件を満たしていれば国選弁護人の請求することもできます。
ただし、国選弁護人はどのような弁護士がくるか分からず、国選弁護人は熱意を感じられないと言う人もいるなどのデメリットもありますので、インターネットなどで刑事事件に強い弁護士を強い弁護士を探すことをおすすめします。
逮捕されて身柄を拘束された後には弁護士を探すことは難しいですので、逮捕される直前に弁護士に相談をすることをおすすめします。もし、逮捕された後に探す場合には、家族などに弁護士を探してもらうといいでしょう。
憲法34条
何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。
③弁護士との接見交通権とは?
弁護士に依頼する権利があったとしても、弁護士と面会することができなければ意味がありません。そのため、弁護士との接見交通権が認められています。
接見とは、身体拘束されている容疑者と面会することをいいます。接見交通権とは、弁護士と他の立会人なしで接見することができ、書類・物を受け渡すことのできる権利です。
ただし、捜査機関側にも時間制限がある中で、捜査をしなければならないという事情がありますので、捜査のために必要があるときには、接見の日時、場所、時間を指定することができます。
刑事訴訟法39条
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第31条第2項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
2 前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
3 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。
④証拠保全請求権とは?
捜査機関側は証拠を集めるために、押収などの強制処分をすることがすることができますが、容疑者側はそうしたことはできません。
しかし、容疑者側が有利に進めるためには、証拠の収集が必要になる場合もあります。弁護士などに証拠を集めてもらうこともできますが、相手方が証拠を持っている場合、目撃者が裁判前に外国に行ってしまう場合もあります。
このように証拠を確保しておかなければ、裁判で証拠を使用できなくなってしまうような事情があるときには、裁判官に強制処分や証人尋問などを請求することができます。これが証拠保全請求です。
刑事訴訟法179条
被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。
⑤勾留についての防御権
逮捕された後、検察官が勾留請求して裁判官がこれを認めた場合には、容疑者は勾留されることになります。
しかし、勾留という形で身柄拘束されていると、会社や学校などに行くこともできなくなったり、家族や友人とも会えなくなったりなどして、勾留されている人にとっては肉体的にも精神的にも大きな負担になります。
そこで、必要がない場合には勾留から釈放されるよう働きかけることが重要になります。
勾留から開放されると、刑事手続は進んでいても会社などに行きながら、裁判などに対応することもできますし、弁護士との打ち合わせも法律事務所ですることができるなど、大きなメリットがあります。
勾留理由開示請求
勾留されている容疑者やその家族、弁護人などは、裁判官に対して勾留された理由を開示してもらえるように請求することができます。
勾留理由を教えてもらうことで、勾留取消請求や準抗告につながりますので、勾留からの解放を目指すことができます。
刑事訴訟法82条勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。2 勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
勾留取消請求
証拠隠滅の可能性や逃亡の可能性がなくなるなどして、勾留する理由や必要性がなくなったときには、容疑者側から勾留取消請求をすることができます。
勾留取消請求が認められた場合には、身柄拘束から開放されることになります。
刑事訴訟法87条
勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
準抗告
勾留する理由や必要性がなく、勾留を決定した裁判所の判断が不当と考えた場合に、勾留決定に対する準抗告をすることができます。
最近では、勾留決定に対する準抗告が認められることも増えてきているように思いますので、勾留に不服がある場合には、勾留決定に対する準抗告が有効になります。
刑事訴訟法429条
裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
勾留の執行停止
容疑者が葬式への出席する必要があったり、病気で入院しなければならなくなったりした場合に、裁判所は職権で勾留の停止をすることができます。
容疑者側に請求権などがあるわけではありませんが、状況によっては勾留の執行停止をするように裁判官に働きかけることができる場合もあります。
刑事訴訟法95条
裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。
被疑者の防御権
- 黙秘権
- 弁護士依頼権
- 弁護士との接見交通権
- 証拠保全請求権
- 勾留についての防御権
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