痴漢で逮捕されたときの弁護士による身柄解放への対応とは?

弁護士
痴漢で逮捕されたとき弁護士は何をするんだろう?

リミナ

エル

今回は「痴漢で逮捕されたときの弁護士による身柄解放への対応」についてだよ!

痴漢で逮捕されてから48時間の弁護士の動きは?

まずは、痴漢の定義を確認してみましょう。痴漢とは、公共の場所や乗り物で女性に恥ずかしい思いをさせるわいせつな行為をすることで、衣服の上または直接を問わず身体に触れる行為のことです。

痴漢の罪状としては、「迷惑防止条例」「強制わいせつ罪」の2種類があります。

痴漢痴漢は何罪になる?~強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の違い

自分、またはご家族が痴漢の容疑で警察に逮捕されてしまった場合には、この先どうなってしまうのだろう、などと不安になってしまい、パニックに陥ってしまうこともあるでしょう。しかし、まずは落ち着いて冷静に対処することが大切です。

痴漢で逮捕された場合には、できる限り早めに弁護士に相談することが重要になります。すぐに適切な対応をすることで、その展開も大きく変わってくることになります。

ここでは、痴漢行為の容疑で逮捕された場合、弁護士が逮捕された人の身柄解放に向けてどのような動きをするのか、そして事件の解決に向けてどのような流れで動くのかについて解説をしていきます。

痴漢の容疑で逮捕されるまでの流れ

痴漢で逮捕されるまでの通常の流れとしては、被害者女性に「この人、痴漢です!」などと言われ、駅員などに駅事務室に連れて行かれることになり、警察官が到着するとすぐに警察署まで連れて行かれることになり、私人による現行犯逮捕をされたとして48時間の身柄拘束を受けることになります。

逮捕逮捕後の流れは?~逮捕から判決まで

痴漢行為をしていたとしても、覚えがなかったとしても、女性に痴漢だと指摘された時点で弁護士に連絡をとることが重要になります。

駅事務室から警察署まで連行されると、すぐに取り調べが始まるなどして、本人が外部と接触することはできなくなります。そのため、痴漢と疑われた時点で弁護士を呼ぶことは、痴漢の容疑者にとって有利に働きます。

痴漢の容疑で逮捕された直後の弁護士の動き

それでは、痴漢の容疑で逮捕された直後に、弁護士がどのように動くのか説明していきます。

警察署で取り調べを受ける48時間の期間を「逮捕期間」と呼びます。この逮捕期間に、痴漢で逮捕された本人が面会できるのは弁護士のみです。

通常、痴漢の容疑で逮捕されたときには、家族に警察署から直接連絡が来ることになります。突然、ご主人が痴漢で逮捕された、などと警察から連絡が来るとご家族の方の不安は尽きないことでしょう。

この段階で考えるべきことは、「社会生活への影響を最小限にする」ということです。いずれ解放されるだろうと考えるのではなく、迅速に刑事事件に強い弁護士へ相談することが早期の解決へとつながります。

家族や本人と協力して弁護を行う

ご家族や本人などから連絡を受けた弁護士は、迅速に逮捕された方の身柄を解放するための法的手続きを進めていきます。先程も説明したように、48時間の逮捕期間中に逮捕された人と面会できるのは弁護士のみです。

この段階で弁護士は、痴漢で逮捕された本人から、痴漢事件の詳細について聞き取り調査を行います。そして、認否の有無、法的なアドバイス、心理的サポートなどを行います。

また、痴漢で逮捕された人が会社に勤めていたり、学校に通っていたりする場合には、身柄拘束中の対応が必要となります。

弁護士に身柄拘束期間の目安を聞いた上で、家族が体調不良で欠勤・欠席する旨の連絡をする場合もありますし、本人の意思などを確認した上で、弁護士が会社に対して安易に懲戒解雇などはしないよう申し入れることもあります。

家族が痴漢で逮捕されたら弁護士に相談すればいいんだね!

リミナ

弁護士による検察官に対する働きかけとは?

痴漢で逮捕されると、48時間以内に検察庁に送検されます。そして検察官は逮捕された本人と面会したうえで、検察官が裁判所に対して身柄をさらに拘束するよう要請するかしないか判断します。この手続きを「勾留請求」と呼びます。

ここで弁護士がする対応の1つが、検察官に対して勾留請求をしないように働きかけを行うことです。

勾留請求をされないことが重要

検察官が勾留請求をするかしないかの判断は、72時間以内に行われます。つまり日数でいうと、逮捕されてから通算3日というとても短い期間です。痴漢で逮捕された場合には遅くても、この時点で弁護士を呼んでおくべきです。

勾留請求の阻止は、弁護士が逮捕された人の釈放にむけて弁護活動ができる最初の段階といえます。ここでの弁護活動では、検察官が逮捕された人に対してさらなる拘束をしないように訴えることです。

勾留請求がされ、それが認められると最大で10日間、延長された場合には最大20日間という長期間の身柄拘束をされることになります。

長期の身柄拘束をされることになると、生活への影響も大きくなりますので、ここで勾留請求されないよう対策することに大きな意味があります。

勾留請求を止めさせるための対応

具体的には、「上申書」「身元引受書」「意見書」などを検察官に提出します。

まず、ご家族や本人と連携して、「上申書」と「身元引受書」の作成を行います。上申書では家族が責任をもって被害者との示談に向けた対応をとること、身元引受書では逮捕された人の身分が保証され、逃亡の可能性はないことなどを明記します。

勾留請求をする主な理由は、「証拠隠滅を防止するため」「逮捕された人の逃亡を防ぐため」の2つです。この2つの理由を明確に否定することが重要になってきます。意見書は弁護士としての立場から、逮捕された人をさらに勾留をする必要がないことなどを書面で検察官に提出します。

弁護士による裁判官への働きかけとは?

弁護士が検察官に働きかけをしたとしても、勾留請求が行われる可能性はあります。その場合には、検察官の次に裁判官に対して働きかけを行い、裁判官が勾留決定をしないよう活動を行います。

裁判官の勾留決定を阻止する

検察官が勾留請求を決定した場合に、弁護士がすることは「裁判官が勾留決定しないよう働きかける」ことです。

勾留決定されると最大20日間の勾留をされることになります。10日間も身柄拘束をされて、外部との連絡が取れない状態になると、通常の勤務を行うことができず、勤務先に逮捕された事実を知られてしまう可能性が高くなります。最悪の場合は、退職勧告、懲戒解雇されてしまう場合があります。

このように勾留決定は、社会的影響が非常に大きいといえますので、ここでの弁護活動はとても重要な意味を持ちます。

まず、弁護士はなぜ検察官が勾留請求を行ったのかを考察します。そして、追加の上申書、意見書などを作成して裁判官に提出したり、裁判官に直接交渉をしたりするなどの働きかけを行います。

準抗告手続きなどの法律手続きを行う

弁護士の取り組みにもかかわらず、勾留決定が下された場合、「準抗告」という法律手続きを次に行うことができます。

準抗告書が提出されると勾留決定を下した裁判官を除く3名の裁判官が、勾留を本当にする必要があるのかどうかを審議する裁判を行います。

勾留継続の相当な理由がないと判断されれば、勾留決定の取消と検察官の勾留請求が却下されます。そして、逮捕された人は釈放されることになります。

他にも弁護士は、勾留理由開示請求、勾留取消請求などの手続きを行う場合もあります。

痴漢の被害者との示談交渉は重要?

痴漢行為の事実を否認している場合などですと、勾留期間の最大10日間だけではなく、捜査機関はさらなる捜査をするため10日間の勾留延長請求をおこなうことができます。

検察官はこの勾留期間中の20日以内に起訴するか、不起訴にするかの判断をします。

不起訴処分を獲得することができれば、前科をつけずに痴漢事件を終わらせることができます。その判断には、被害者との示談が成立しているかどうかが影響してきます。

示談が成立していれば、加害者と被害者で事件は解決していると検察官はみなし、立件する必要性が低くなるからです。最終的な起訴、不起訴の判断は検察官が決定しますが、不起訴となった場合には釈放され、前科がつくこともありません。

そのため、不起訴処分を獲得できる可能性を高めるためには、起訴される前に被害者との示談交渉を成立させることが重要になってきます。

痴漢被害者との示談交渉には弁護士が必要

弁護士が行う業務として、「被害者との示談交渉」があります。痴漢をしたと全面的に認める場合には、早期に被害者との示談を成立させる必要があります。しかしながら、被害者保護の観点から連絡先を知ることは弁護士でなければできません。

なぜなら、性犯罪においては、被害者保護の観点から加害者及びその家族には、被害者の個人情報を警察官などの捜査機関から提供されることはないからです。

たしかに、痴漢の容疑者に連絡先は教えたくないかも

リミナ

弁護士はまず、捜査機関に示談交渉をするための被害者の氏名・連絡先を教えてもらえるよう依頼をします。そして、被害者女性から弁護士に連絡先を提供することの了承を得ることができたとき、はじめて連絡先を知ることができます。

このような手順を踏んで、弁護士は被害者と連絡を取ることができます。そして、被害者と示談交渉ができるよう日程調整をします。

痴漢事件では被害者と面識がないことがほとんどですので、示談交渉をするときは弁護士が連絡先を入手することになります。

痴漢の容疑で起訴された場合の対応は?

痴漢の疑いで逮捕され、起訴された場合に、弁護士が行うことができる身柄解放に向けての働きかけは、保釈請求をすることです。

起訴されることが決まったからといって、勾留が終了するとは限らず、引き続き身柄拘束をされる場合が多いです。起訴前の勾留は、最大で20日間と期限が定められていましたが、起訴後の勾留は2か月となっており、その後も必要があると認められれば1か月ごとの延長が可能で上限はありません。

保釈とは、保証金納付を条件に勾留状態から自由になる法律手続きのことで、弁護士が保釈を請求する場合には、裁判所に保釈請求書と身元引受書を提出します。保釈の相場としては、150万~300万円程度ですが、告訴人の収入や事件の重大性などで金額は上下します。

裁判所は、重大犯罪及び逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合を除いて、保釈を原則認めます。保釈請求を裁判所に対して請求してから身柄が解放されるまでの目安期間は、およそ2日~4日程度です。

早期の身柄解放のためには弁護士への相談が重要?

弁護士が痴漢によって逮捕された人の身柄解放向けて行う法律手続きの流れを説明しました。

刑事事件は、驚くほど物事が迅速に進んでしまいます。そのため、できるだけ早めの段階で弁護士に相談することが、生活への影響を最小限に抑えるためのポイントといえます。

弁護士に適切なアドバイスを受け、弁護士にさまざまな対応をしてもらうことで、身柄拘束の期間が縮まる可能性も高くなります。身柄拘束期間が短くなると、生活への影響も小さくなり、もとの社会生活に戻りやすくなります。

また、不起訴処分を獲得するために重要となる被害者との示談でも、弁護士の存在は不可欠です。自分やご家族が痴漢の疑いで逮捕されてしまった場合には、すぐに刑事事件に強い弁護士に相談するようにしましょう。

エル

自分や家族が痴漢で逮捕されたらすぐに弁護士に相談しよう!