リミナ
エル
痴漢で成立する犯罪とは?
痴漢行為で逮捕される場合には、どのような犯罪で逮捕されることになるのでしょうか。
刑法などには、痴漢罪という犯罪はなく、痴漢行為で成立する犯罪は主に、強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の2つがあります。
強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反のどちらで逮捕されるかによって、刑罰なども変わってきます。そのため、どちらが適用されるかという点が痴漢事件では重要になってきます。
まずは、強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反が、それぞれどのようなものであるかを紹介します。
強制わいせつ罪とは
強制わいせつ罪が成立するのは、13歳以上の人に暴行や脅迫をして、わいせつな行為をした場合です。被害者が13歳未満の場合には、暴行や脅迫は必要なく、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪となります。
ここでいう「暴行」「脅迫」とは、抵抗を著しく困難にする程度であることが必要になります。このように聞くと暴行・脅迫という条件を満たすのは難しそうですが、胸を触る行為そのものが暴行にあたることもあり、強制わいせつ罪の「暴行」「脅迫」は軽微なもので十分となります。
また、「わいせつな行為」とは、被害者の性的羞恥心を害する行為のことを指します。簡単にいってしまうと、胸やお尻を触るなど、一般的にわいせつな行為と思われるものは、強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となります。
性的な行為をしたとしても、同意があれば問題はありませんので、被害者の同意がないことも必要になります。ただし、同意の上であっても、電車内などで性的な行為を行った場合には、公然わいせつ罪などの別の犯罪が成立することになってしまいます。
以前は、加害者側の性的意図も必要とされていましたが、平成29年11月29日の最高裁での判決で、加害者側の性的意図は必要ないとされました。
刑法176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
迷惑防止条例違反とは
迷惑防止条例は、各都道府県で定められていますので、地域によって内容に違いがありますが、痴漢に関連する部分は多くの都道府県であまり違いはありません。ここでは、東京都の条例を例に説明します。
東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)では、公共の場所・乗り物で、人の体に衣服の上からや直接触ることを禁止しています。
一般的にイメージされるような痴漢は、迷惑防止条例違反にあてはまることになります。
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
- 強制わいせつ罪
- 迷惑防止条例違反違反
リミナ
強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の違いとは?
ここまでは、強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反が、それぞれどのようなものであるかを説明しました。では、痴漢事件の場合に、強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反はどのように区別されているのでしょうか?
強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反のどちらにあたるかを判断するには、どのような痴漢行為であったかということが重要になります。
強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反の大きな違いとして、暴行・脅迫があるかどうかという点があります。
そのため、服の中に手を入れて被害者の体を触るような、強引な痴漢の場合には強制わいせつ罪が成立する可能性が高くなります。逆に、服の上からお尻を触るような痴漢は迷惑防止条例違反となる可能性が高くなります。
また、被害者が13歳未満の場合には、暴行・脅迫がなくとも強制わいせつ罪は成立しますので、服の上から触る痴漢行為であっても強制わいせつ罪が成立する場合があります。
痴漢行為の違い
- 強制わいせつ罪→服の中に手などを入れて直接被害者の体を触る痴漢行為
- 迷惑防止条例違反→服の上から触る痴漢行為
エル
刑罰の違いは?
強制わいせつ罪や迷惑防止条例違反の違いは、おおまかに言うと、服の中に手を入れているかどうかという点でした。
では、痴漢で逮捕されて、強制わいせつ罪や迷惑防止条例違反で有罪となった場合に、どのような刑罰が科される可能性があるのでしょうか。2つの罪の刑罰の違いについて解説します。
刑にはどのような種類がある?強制わいせつ罪の刑罰
強制わいせつ罪の刑事罰は「6月以上10年以下の懲役」と定められており、懲役刑のみとなっています。
そのため、繰り返し痴漢行為をしているなど、悪質と判断された場合には、懲役の実刑処分となることも十分あり得ます。また、初犯の場合には執行猶予がつく可能性もあります。
迷惑防止条例違反の刑罰
東京都で痴漢行為を行った場合の刑事罰は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。迷惑防止条例は都道府県ごとに定められていますが、多くの都道府県で東京都と同様の刑罰となっています。
迷惑防止条例違反となる痴漢で逮捕された場合には、懲役刑のみではなく罰金刑もあるため、起訴されることになったとしても、略式起訴になる場合もあります。
また、迷惑防止条例違反にあたる痴漢であれば、示談を成立させるなどして不起訴処分を獲得して、前科をつけずに痴漢事件を解決できる可能性も、強制わいせつ罪の場合と比べて高くなります。
刑罰の違い
- 強制わいせつ罪→6か月以上10年以下の懲役
- 迷惑防止条例違反→6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
エル