首相官邸ドローン落下事件とは?

たしか、官邸にドローンが侵入したっていうニュースあったよね?

リミナ

エル

今回は「首相官邸ドローン落下事件」を紹介するよ!

首相官邸ドローン落下事件の概要は?

2015年4月22日に、千代田区永田町の首相官邸のヘリポートに黒塗りのドローンが侵入するという事件が起こりました。

この事件が日本でのドローンに対する法整備が具体的に動き始めるきっかけとなりました。まずは、この「首相官邸ドローン落下事件」の流れについてまとめます。

2015年4月22日 事件発覚

2015年4月22日午前10時20分ごろ、首相官邸の屋上ヘリポートに、小型の無人飛行機(ドローン)が落下しているのを職員が発見しました。首相官邸ドローン落下事件の前からドローンは普及が始まっており、素晴らしい空撮が可能な高性能ドローンが誰でも手に入れることができる時代になっていました。

様々な企業・企業での活用や、趣味で空撮をするなど、ドローンへの注目が集まっており、法規制の必要性が検討されつつある中での事件でした。

運送ドローン輸送・運送ドローンの活用事例と課題とは?

発見されたドローンは直径約50センチで、小型カメラや長さ約10センチメートルのプラスチック容器が付いており、機体に放射線を示すマークと「RADIOACTIVE」の表記がされて、また、発煙筒のようなものが取り付けられていたとの情報が出ていました。

事件直後は、落下事故なのかテロ事件なのかも含めて、警視庁が捜査にあたっていました。政府高官は、ドローンについて何処のものかは不明で、危険性はないが、テロかどうか不明という旨の発言をしていました。

警視庁は同日、ドローンに取り付けられていたプラスチック製の容器付近から放射線のガンマ線が1時間当たり最大1.0マイクロシーベルト測定され、セシウム134と、核実験や原発事故で発生することが多いセシウム137であることを発表しました。

また、当初は「発煙筒のようなもの」とされていたものは、ドローンのバッテリーのケースである可能性が高いことが、判明しました(最終的には、緊急保安炎筒を遠隔操作で自動着火可能な状態に加工したものだった様です)。

2015年4月24日 犯人が警察署に自首

2015年4月24日夜8時過ぎ、犯人と思われる上下迷彩服姿の男性が福井県警の小浜警察署に自首し、威力業務妨害容疑で逮捕されました。男性はドローンのコントローラーと、ドローンに搭載していた容器に入れていたとみられる砂を所持していました。

男性は福井県小浜市在住の当時40歳の元自衛官、山本泰雄容疑者で、自首をする30分前の24日午後7時35分ごろ、インターネット掲示板「2ちゃんねる」(現在の5チャンネル)スレッドを立てていました。そこでは山本容疑者が「官邸サンタ」を名乗り、「反原発」の主張や事件の詳細を投稿したブログのアドレスなどを記載していました。そこでは警視庁しか知らない情報や、まだ明らかにできていない情報も記載されていました。

下で引用しているように、当日の様子なども書かれており、警視庁の捜査によって事件の全容が解明される前に、犯人によって明らかにされるという状況になりました。

その後の供述で、山本容疑者は、ドローンを飛行させたのはブログで書かれている通り2015年4月9日の午前3時半ごろで、プラスチック製容器の中に入れたのは「福島の砂100g」であると述べました。ドローンが発見されるまで14日ほどの時間が経過していたことになります。

ドローンを官邸へ飛ばた動機として、原発に関する政策への不満があり、反原発を訴えるため、今回の行為に及んだとしていました。

実際に、ブログ内では一匹狼型のテロリストを指す「ローンウルフ」と自称しており、原発の再稼働を止めるためには「テロをも辞さない」と強調し、グーグルマップを利用して原発への侵入経路を検討したり、以前から首相官邸へのドローン侵入を計画していたようです。2014年12月には、官邸まで行き、ドローン侵入計画を実施しようとして断念していました。

エル

大まかな事件の流れはこんな感じだよ!

犯人 山本泰雄のブログから見た事件の流れ

様々な報道で、首相官邸ドローン落下事件についての説明はありますが、最も流れが分かりやすいのが犯人である山本泰雄本人のブログのようにも思えます。現在ブログは非公開となっていますが、事件の全容を把握するのに大きく役立つと思いますので、ここでは犯人である山本泰雄のブログから一部引用して紹介します。

また、下の画像は山本泰雄がブログで紹介していた、首相官邸ドローン落下事件に用いられたと思われるドローンです。

首相官邸ドローン落下事件に用いられたドローン(参照:犯人 山本泰雄のブログ(現在非公開))

参照:犯人 山本泰雄のブログ(現在非公開)

実行日当日と前日の様子

事件の実行日(2015年4月9日)とその前日の様子が書かれているブログ記事です。

犯行に用いられたドローン(出典:犯人 山本泰雄のブログ(現在非公開))

前日に計画を実行するための下見に訪れていることがわかります。当日は屋上のヘリポートまでコントロールしたわけではなく、ビル群の間でGPSをロストして、結果として首相官邸ヘリポートに着地したようです。

翌日帰宅後にニュースなどでの報道がなく、少し困惑をしていたようです。

(2015年)4/8
00:00 海老名SA
01:00 赤坂到着
人通りが途絶えるのを待つ
チャリンコ警官の巡回が1時間に1回くらい・・・通りを往復してるから2回通る
これとかち合ったら・・・もう仕方ない

03:00 人通りは途絶えた・・・でも雨とビル風が激しい・・・
04:00 天候が更に悪化・・・一旦赤坂離脱・・・
東名のSAで仮眠

4/9
01:00 港北PA到着・・・待機
03:00 港北PA出発
03:30 赤坂到着
昨日はほとんどいなかった客待ちタクシーがズラリ
雨の日はタクシー忙しいのか・・・今日は暇そう・・・邪魔・・・
離陸地点を通りから入った駐車場に変更・・・ビルの合間・・・電波が心配・・・
迷わず離陸・・・メンタル問題なし
GPS感度が悪くてビルスレスレで上昇
官邸上空・・・中庭・・・全く見えない・・・真っ暗・・・
官邸の輪郭すらつかめない
電気つけとけよ・・・節電か・・・じゃあ仕方ない・・・
HOMEを現在地に再設定する操作をするが設定できない・・・想像以上に電波が悪い
カメラ画像にノイズが乗る・・・
目標を官邸前庭に変更
前庭のライトめがけて下降・・・画像電波ロスト・・・
なぜかDJIアプリダウン・・・再立ち上げ
操縦用の電波は微妙に拾っててスティックを下降させ続ける
そのまま完全ロスト・・・
しばらく待つも戻らず・・・現場離脱

04:00 渋谷
10:45 小浜

帰宅後ニュースをみるが・・・何も報道ない・・・
第2の矢・・・行方不明・・・

官邸へのドローン落下の犯行が発覚した後の様子

自身が操縦していたドローンが発見されたことについては、ヤフーニュースで認識したようです。

2週間放置されていたことへの驚きと、自身が問われる罪や、今後自首するかどうか迷っている様子が伺えます。

2015/04/22

ヤフーニュースで「官邸にドローン」
遅せーよ職員!てゆーか警備員じゃないのか・・・2週間放置て・・・
屋上てことはHOMEの切り替えができてたのか・・・いい子だ・・・

テレビつけたらミヤネ屋でもやってる
宮根氏は的確なコメント・・・同感・・・こんなもの法整備も困難・・・
ヤスプレイ(手前)は組み上がってたけど予備をマットブラックに塗装中だったので組み立てる
使わずじまいか・・・
工具を持つ手が震える・・・
犯罪者は自分の報道をこんな感じでみるのか・・・
平常心を保つのが難しい・・・

放射線も感知してくれたか・・・液体とか言ってるけど土だし・・・あとは声明文・・・
威力業務妨害になるのか・・・公務執行妨害とかはならないのか・・・
さて・・・どうするか・・・
選挙終わったから自首してもなぁ・・・

もともと、福井県知事選に合わせての計画であったのが、発見が遅れて計画が崩れてしまったことを嘆いています。

他にも、100グラムへのこだわりや、再度の犯行を行うかについても考えていた旨が書かれています。

2015/04/24

タイトル「第1の矢」に関してはフィクション
高浜町への汚染土の埋設はしてない
前に書いたけど官邸汚染土ドローンで報道を引き付けた後
自治体間の抗争を演出して官邸から福井知事選に注目を移動するための手段・・・
選挙後(4/12 20:00)にブログを予約更新して「第1の矢」のフィクションを明かす計画・・・
選挙とっくに終わって意味無くなった・・・
官邸を狙うときは2週間前に飛ばさないといけないのか・・・難しい・・・

現状福島の汚染土は持ち出し放題だから・・・脅迫はどこにでも通用する・・・
目に見えない放射線は風評だけでも充分・・・だから汚染土も必要もない・・・
官邸も守れない、汚染土も管理できない国が原発を・・・てのは多分マスコミが言ってくれるか・・・

ドローンに積んだ汚染土は99gでもなく101gでもなく100g
テロにセンスとかコダワリとかはタワゴトだけど・・・
使用した汚染土はこれが全て・・・ここが今の倫理のリミッター・・・
去年退職してからずっと大きな迷いの中・・・
前例ない道を1人で歩くのはシンドイ・・・
核の平和利用vsテロの平和利用・・・
再稼動の進行にあわせてリミッターを解除していけばイスラム国と変わらなくなる・・・
自分の無能さが悲しい・・・
官邸の警備も無能で悲しい・・・歴史が歪んだじゃないか・・・
ドローン1機で右往左往・・・証拠処分してしまえば捕まらないな・・・もう一回やるか・・・
警備を強化した官邸に更に汚染土積んだドローンを落として・・・
そんなことしても再稼動は止まらないしな・・・
でも面白そうだな・・・やるか・・・イヤ・・・やらない・・・
100gのままでいい・・・

発見が遅かったことで、犯人の狙いを阻止できましたが、官邸の警備体制の課題は浮き彫りになりました。

この事件の後、ドローンに関する法規制が急速に進みましたが、ドローンへの印象が悪くなり、消極的な方向での法整備になってしまった面もあるように思います。

犯人の考えとかも書かれているんだね

リミナ

首相官邸ドローン落下事件の刑事裁判は?

裁判

ドローンを総理大臣官邸屋上に落下させた本事件は、威力業務妨害と火薬類取締法違反が成立するかが争われました。

威力業務妨害と火薬類取締法違反がどのような罪であるかや、今回の事件で被告人山本泰雄のどのような行為が、威力業務妨害と火薬類取締法違反の罪に当たるかを判決を参考にしながら簡潔に解説していきます。

火薬類取締法違反

「火薬類の製造」とは

今回の事件で適用される火薬類取締法の条文は、「許可を受けた者」以外による、「火薬類の製造」を禁止する4条と、4条違反の罰則を定めた54条です。また、関連する条文として3条があります。

ここでいう「火薬類の製造」とは何を意味するのでしょうか。

3条で「火薬類の製造(変形又は修理を含む。(略))」とされています。変形とは、火薬類の実質を変えることのない加工を指します。そのため、火薬類を一から作り出す場合だけではなく、火薬や爆発物などの化学的性質を変えることなく加工することも「製造」に含まれると解されます。

火薬類取締法3条
火薬類の製造(変形又は修理を含む。以下同じ。)の業を営もうとする者は、製造所ごとに、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

火薬類取締法3条
火薬類の製造は、前条の許可を受けた者(以下「製造業者」という。)でなければ、することができない。但し、理化学上の実験、鳥獣の捕獲若しくは駆除、射的練習又は医療の用に供するため製造する火薬類で、経済産業省令で定める数量以下のものを製造する場合は、この限りでない。

火薬類取締法58条2号
次の各号の一に該当する者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
二 第4条の規定に違反した

火薬類取締法違反の疑いのある行為

被告人が、火薬類であるがん具煙火(火薬類取締法2条2項)に分類される緊急保安炎筒1本の着火部分にニクロム線を取り付けるなどして、遠隔操作により電気点火が可能な状態に加工した行為が火薬類取締法違反の疑いがある行為とされました。

また、この緊急保安炎筒は、1本あたり約76グラムの火薬が使用されており伝火薬から発炎剤に炎が移ると温度約1000度くらいで5分程度燃焼するというものでした。

火薬類取締法違反にあたるか

上記の行為は、火薬類の化学的性質を変更しない加工であり、火薬類の変形にあたります。火薬類取締法では、変形も製造の1種でしたので、火薬類取締法4条で禁止する「火薬類の製造」に該当します。

このように、被告人は、3条の許可を受けていないにも関わらず、「火薬類の製造」を行っており、4条ただし書にもあたらないことから、火薬類取締法違反にあたります

威力業務妨害罪

威力業務妨害が成立する要件

威力業務妨害罪は、「威力を用いて人の業務を妨害」すると成立する犯罪となります。名前そのままの内容ですが、「威力」「業務」「妨害」がそれぞれ何を指すとされているかをまとめます。

  • 「威力」→「被害者の自由意思を制圧するに足りる勢力」
  • 「業務」→「具体的個々の現実に執行している業務だけでなく、広く被害者の当該業務における地位に鑑み、その任として遂行すべき業務」
  • 「妨害」→「現に業務妨害の結果の発生を必要とせず、広く業務の経営を阻害する一切の行為」

刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又は業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

違反業務妨害の疑いのある行為

被告人は、2015年4月9日午前3時40分頃、東京都港区の駐車場において、あらかじめ内部に放射性物質を含有する土砂を入れ放射性物質の存在を示す標識や文字が印刷されたシールを貼付した容器、緊急保安炎筒等を搭載したドローンを遠隔操作し、首相官邸の敷地内に降下させる操作をして屋上ヘリポートに落下させました。

そして、22日午前10時25分頃、これを発見した内閣官房内閣総務官室総理大臣官邸事務所庁舎管理担当所長補佐らに、警備担当者への連絡、発見時の状況説明等の対応を余儀なくさせて、事務作業の遂行を困難にした行為が、威力業務妨害にあたる疑いがある行為となっていました。

「威力」にあたるか

ドローンを落下される行為は、ある程度の高度から一定の重量を持つ物体を落下させる行為であり、人に身の危険を感じさせる行為です。

また、ドローン本体には放射性物質を表すマークと文字が入っていたり、また、ニクロム線が繋がれた緊急保安炎筒がついており、爆発物を思わせる外見をさせており、発見者に被爆と爆発の危険性を感じさせるものでした。

これは、発見した内閣官房内閣総務官室総理大臣官邸事務所庁舎管理担当所長補佐らに、テロなどの疑いを持たせるなどし、異常事態対応をするために、通常業務を中断せざるを得なくする行為で、自由意志を抑圧する「威力」にあたります

「業務」にあたるか

威力業務妨害罪の「業務」には、強制力を行使する権力的公務は含まれないされていますが、今回は官邸事務所の庁舎管理や庶務などの事務であり、これらの職務が強制力を行使する権力的公務でないことは明らかです。

また、事務作業は一般的に「業務」に含まれる内容であることも明らかですので、「業務」にあたります

「妨害」にあたるか

「威力」にあたるかの検討部分と近い内容ではありますが、本件ドローンを発見した官邸職員が、被曝や爆発等を恐れ、通常業務を中断し異常事態への対応を必要とするおそれが非常に高いでしょう。

そのため、官邸事務所の庁舎管理等の業務を阻害する行為といえますので、「妨害」に当たるといえます。

威力業務妨害の成否

ここまでで検討したように被告人の行為は「威力を用いて人の業務を妨害」するものといえます。

被告人は、放射線物質表示入りの容器を作成し緊急保安炎筒を改造してドローンに搭載しており、本件ドローンを官邸に落下させています。これがドローンを発見した官邸職員らの自由意思を制圧し、職務を妨害する危険があることは明らかで、被告人が騒ぎを起こすために本件行為に及んでいることからしても故意は認められます。

したがって、威力業務妨害罪が成立します。

量刑

威力業務妨害と火薬類取締法違反として、被告人を懲役2年、執行猶予4年と、ドローン1台と緊急保安炎筒2本の没収を言い渡しました。

判決理由は以下のような内容でした。

  1. 首相官邸周辺の下見やドローンの飛行実験しており、緊急保安炎筒の改造、放射性物質を含有する土砂の採取などをした上で犯行に及んでいるという高い計画性
  2. 人の生命や身体に及ぼす危険性が高かったとまではいえない
  3. 官邸にドローンを墜落させる行為は模倣性が高く、一般予防の見地からも軽視できない
  4. 動機は原発の再稼働を阻止するためとはいえ、合法的な政治的言論によるべきで、この動機に酌量すべき点は乏しい

このような事情から、本件は懲役刑を選択すべきと判断がされました。

ただし、被告人には前科がなく、自首をして素直に供述していることなどから、被告人には社会内で自力更生する機会を与えるのが相当と判断されて、4年間の執行猶予が付されました。

やっぱり有罪になったんだね!

リミナ