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Contents
刑の種類にはどのようなものがある?
刑罰の種類
刑法で定められている刑の種類は、①死刑、②懲役、③禁錮、④拘留、⑤罰金、⑥科料、⑦没収、の7種類です。(刑法9条)
この7種類の刑罰が、それぞれどのような内容なのかについては後ほど説明します。
刑法9条
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
主刑と付加刑
条文では、主刑と付加刑という言葉が出てきており、没収だけが付加刑で、その他は主刑となっています。
主刑とは、その刑単体で言い渡すことができる刑です。これに対して、付加刑とは、主刑を言い渡す場合のみ、主刑に付け加えることのできる刑のことで、刑法で定められている付加刑は没収のみです。
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7種類の刑罰はどのようなもの?
刑の種類は、①死刑、②懲役、③禁錮、④拘留、⑤罰金、⑥科料、⑦没収、の7つでした。
これらのうち、死刑、懲役、罰金などは聞いたことある方も多いかもしれませんが、禁錮、拘留、科料、没収は聞きなじみがない方が多いと思います。今回は、この7種類の刑がそれぞれどのようなものか、どのような違いがあるのか、ということについて説明します。
①死刑とは
死刑は、命を奪う刑罰で、絞首によって行われると定められています。(刑法11条)
江戸時代などには、牛裂き、釜茹で、などのような残虐な死刑が行われていましたが、現在、死刑の制度がある国では、薬や電気、絞首などといった方法で死刑が執行されています。
刑法11条
死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
2 死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。
過去10年に死刑を執行している国は世界で42ヶ国であるのに対して、通常の犯罪に死刑を廃止している国(実質的に廃止している国を含む)は152ヶ国となっています。また、先進国のうち、現在も死刑を行っている国は、日本とアメリカのみであり、アメリカでも州によっては死刑が廃止されているなど、死刑廃止の方向へ向かっています。
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②懲役とは
懲役とは、身柄を1か月以上刑務所に拘束され、刑務所にて刑務作業を行うことになる刑罰です。
刑務作業とは、イスや棚などを製作する木工、ノートなどを製作する印刷などの職種から、適正に応じたものが選ばれて就業するものです。
ちなみに、国が民間企業等と作業契約をして行った刑務作業の収入はすべて国庫に入り、平成27年度は約40億円となっているようです。
刑法12条
懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。
③禁錮とは
禁錮とは、懲役と同じように、1か月以上の間、身柄を刑務所で拘束される刑罰です。懲役との違いとしては、刑務作業を行う義務がないことです。
ただし、禁錮刑の場合でも、希望した場合には刑務作業をすることができます。
刑法13条
禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、1月以上20年以下とする。
2 禁錮は、刑事施設に拘置する。
④拘留とは
拘留とは、1日以上30日未満、身柄を刑務所で拘束される刑罰です。懲役との違いは、刑務作業の義務がないこと、禁錮との違いは、期間が30日未満となっており短い期間であることです。
懲役・禁錮・拘留のように、受刑者の自由を制限する刑罰を自由刑と呼びます。
刑法16条
拘留は、1日以上30日未満とし、刑事施設に拘置する。
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期間 | 刑務作業 | |
懲役 | 1か月~20年、無期 | 義務 |
禁錮 | 1か月~20年、無期 | 任意 |
拘留 | 30日未満 | 任意 |
⑤罰金とは
罰金とは、1万円以上の金銭を納付する刑罰です。
もしも罰金を全て支払うことができない場合には、労役留置所に留置されることになり、そこで働いて支払うことになります。日当の目安としては、5000円程度になります。
刑法15条
罰金は、1万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、1万円未満に下げることができる。刑法18条
罰金を完納することができない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する。
⑥科料とは
科料とは、千円以上1万円未満の金銭を納付する刑罰です。
科料の場合も、罰金と同じように、支払いができない場合は労役留置所に留置されることになります。
刑法17条
科料は、千円以上1万円未満とする。刑法18条2項
科料を完納することができない者は、1日以上30日以下の期間、労役場に留置する。
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⑦没収とは
没収とは、受刑者が持っている、犯罪に関連するものを剥奪する刑罰です。没収は付加刑ですので、ここまでに紹介した6つの主刑とあわせて言い渡されることになります。
犯罪に関係していても、飲食店での接待などのように、没収することができない場合には、金銭での追徴をされることがあります。
刑法19条
次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。刑法19条の2
前条第1項第3号又は第4号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。刑法20条
拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第19条第1項第1号に掲げる物の没収については、この限りでない。
刑罰の7種類
- 死刑→命を奪う刑罰で、絞首によって行われる
- 懲役→1か月以上刑務所に拘束され、刑務作業を行う
- 禁錮→1か月以上刑務所で拘束される(刑務作業は任意)
- 拘留→1日以上30日未満、身柄を刑務所で拘束される
- 罰金→1万円以上の金銭を納付する
- 科料→千円以上1万円未満の金銭を納付する
- 没収→受刑者が所有する、犯罪に関係したものを剥奪する
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刑罰の段階とは?
ここまでは刑罰を内容によって分類してきましたが、段階によって分類することもでき、法定刑・処断刑・宣告刑の3段階に分けることができます。
それでは、これらがどのようなものかを説明します。
法定刑とは
法定刑とは、刑法の条文で定められている刑罰のことです。
たとえば、傷害罪の法定刑は「15年以下、1か月以上の懲役、または50万円以下、1万円以上の罰金」ということになります。
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刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
処断刑とは
処断刑とは、刑罰を重くしたり軽くしたりするような事情がある場合に、法定刑に加重・減刑した刑のことをいいます。
たとえば、傷害罪の法定刑は15年以下の懲役でしたので、罪を軽くする事情があり、減刑された場合には7年6か月以下、半月以上の懲役になります。
宣告刑とは
宣告刑とは、法定刑や処断刑の範囲内で、裁判官が具体的な年数・金額を決定して言い渡す刑です。
たとえば、「懲役3年、執行猶予5年に処する」などのように、明確な年数をはっきりと言い渡します。
刑の段階
- 法定刑→条文で定められている刑
- 処断刑→法定刑に加重・減刑した刑
- 宣告刑→具体的な年数を決定して言い渡す刑
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